- Jun Hanazumi
- 2025年12月26日
- 読了時間: 7分
海南自由貿易港が全島閉鎖運営を開始
2025年12月18日、海南省海口市において海南自由貿易港の「全島閉鎖運営」開始式典が開催され、海南島全域が正式に「国内に位置する国外関税区域」という特別な監督管理体制に移行しました。これは中国の対外開放政策における重要な節目であり、特に先端テクノロジー産業の発展に強力な推進力をもたらすものと位置づけられています。

閉鎖運営の本格化により、海南ではゼロ関税、低税率、簡素化された税制といった優遇政策が一体的に実施されます。これにより、AI向け高性能演算装置、ロボットの中核部品、ハイエンド医療機器などの輸入コストが大幅に低減され、関連企業にとって研究開発および製造のコストパフォーマンスが大きく向上します。特に、これまでコスト面で制約を受けていたスタートアップや中堅テクノロジー企業にとっては、実証・量産の拠点としての魅力が高まっています。
同時期には「2025海南身体性知能産業エコロジー大会」も開催され、会場では海南身体性知能イノベーション・インキュベーションセンターが設立されました。国内外20社以上の研究機関・企業が参加するグローバル身体性知能産業連合も発足し、ヒューマノイドロボットや産業用知能機器分野を中心に、技術研究から成果の社会実装までを一体的に推進する体制が整えられています。
さらに海南省政府は、AI・ロボット関連企業に対し、最大5,000万元の研究開発補助金や用地優遇を提供する支援策を発表しました。これは単なる地域振興策にとどまらず、中国が世界に向けてテクノロジー分野での開放協力を進めるための新たな国際プラットフォームを構築する動きと捉えられます。
日本市場の観点から見ると、海南は中国本土向け事業と国際展開を同時に見据えた実証・連携拠点として活用できる可能性があります。既にトヨタ、武田薬品、ローソンなどの日本企業が海南島向けの活動が報道されました。今後は日中企業による共同研究や技術実証の場としても注目されるでしょう。
中国初、整形外科手術ロボットの全基幹部品を『完全自社開発』
2025年12月18日、深圳で開催された国際ハイパフォーマンス医療機器展において、元化インテリジェンステクノロジー(深圳)有限公司は、自社開発のロボットアーム式膝関節手術システム「YuanBOT-HX200」が中国国家薬品監督管理局(NMPA)の承認を取得したと発表しました。これにより同社は、2025年内に合計12件の医療機器登録証を取得し、手術ロボット、知能化ソフトウェア、付属消耗品、リハビリテーションモニタリング機器という4つの中核分野を網羅する体制を確立しました。

2018年設立の元化インテリジェンスは、7年間にわたる集中的な研究開発を経て、中国で唯一、整形外科手術ロボットの全中核部品を自社開発できる企業へと成長しました。これまで高価格帯の手術ロボット市場は欧米大手が長年独占してきましたが、同社の台頭はその構図を大きく変えつつあります。
今回初公開された世界初の「錕鋙® 5-in-1」全整形外科手術ロボットは、股関節・膝関節・単顆関節置換に加え、脊椎や外傷治療まで1台で対応可能です。AIナビゲーションによる高精度位置決め技術により、手術精度は0.1ミリを実現し、手術時間は従来比で約40%短縮、術後合併症の発生率も約60%低下したとされています。
国際展開も着実に進んでおり、同社製品はブラジル、インドネシア、タイなどで医療機器登録を取得しています。業界関係者は、元化インテリジェンスの急成長は、中国のAI+医療ロボット分野におけるシステム的イノベーション能力を示すものだと評価しています。
日本でも高齢化の進展により整形外科手術の需要は増加しており、中国製医療ロボットの技術水準向上は、日本メーカーにとって競争・協業の両面で無視できない動きと言えるでしょう。
中国、新薬開発プロセスをAI活用で革新
2025年12月11日、グローバルヘルス医薬品開発センター(GHDDI)は北京で、中国が自主開発したAI創薬プラットフォーム「AI孔明」を正式に発表しました。本プラットフォームは、創薬における標的解析から分子生成、薬効可能性の最適化に至るまで、開発プロセス全体をAIで一貫して支援する点が最大の特徴です。

従来の創薬では、データの分断や工程間の非連続性、開発期間の長期化が大きな課題となってきました。「AI孔明」は、生成AIによる分子設計、高精度な仮想スクリーニング、独自アルゴリズムを融合し、「設計―スクリーニング―評価―最適化―意思決定」を循環させるインテリジェントなクローズドループ型開発システムを構築しています。
同プラットフォームは、膨大な実開発データと学術知識グラフを基盤としており、多分野の専門知識を継続的に学習・最適化可能なAI生産力へと転換しています。すでに結核、マラリア、希少疾患など数十の研究パイプラインで検証が行われ、候補分子の命中率は従来比で8~15倍、最適化効率は20倍以上に向上したとされています。
また、ローカルデプロイに対応した安全基盤を採用することで、研究データの機密性を確保しつつ、学術界に対しては一部機能を無償開放するなど、オープンイノベーションの姿勢も打ち出しています。「AI孔明」の発表は、中国がAI創薬の中核技術領域で自立的な突破を果たしつつあることを象徴する出来事です。
日本の製薬業界にとっても、創薬効率の向上は喫緊の課題であり、中国発AI創薬プラットフォームの進展は、競争環境を見直す上で重要な参考事例となります。
ゲイツ財団主導のAI農業アドバイザリープラットフォーム、ケニア・インドで実証
2025年12月22日、BMZ Digital.Globalは、ゲイツ財団が2年間にわたり投資・支援してきた「農業情報交換プラットフォーム(AIEP)」の実証プロジェクトが、ケニアおよびインド・ビハール州で順調に進展していると発表しました。本プロジェクトは、識字率やデジタルスキルが低い小規模農家を対象に、生成AIを活用した農業アドバイザリーサービスを提供する革新的な取り組みとして注目されています。

AIEPでは、検索拡張生成(RAG)、現地言語処理、厳選された農業データセットを統合し、IVR(音声応答システム)、ソーシャルメディア、モバイルアプリなど、農家が利用しやすいチャネルを通じて、状況に応じた個別農業アドバイスを提供しています。800人以上の農家を対象とした調査では、平均NPSスコア60と高い満足度が示され、実用性の高さが確認されました。
プロジェクトチームは現地農家を直接訪問し、土壌管理、資材調達、市場アクセスといった課題を把握した上で、プラットフォームの改善を進めています。また、データ共有基盤や共通農業コーパスといった「デジタル公共財」の整備を重視し、他の国際的AI農業プロジェクトとの連携も進めています。
日本においてもスマート農業の推進が課題となる中、低コストかつ包摂的なAI活用モデルとして、本事例は示唆に富んでいます。
中国初の「AI+水稲育種」大規模実証基地が黒竜江で稼働
2025年12月15日、中国黒竜江省佳木斯市で、中国初となる「AI+水稲育種」大規模実証基地が正式に稼働しました。同基地は中国農業科学院と地方農業企業が共同で建設したもので、総投資額は約2.3億元、面積は80万平方メートルに及びます。

基地では、AI画像認識、環境センシング、大データ分析技術を水稲育種の全工程に統合しています。高精度センサーが土壌水分、温度、日照、CO₂濃度などをリアルタイムで取得し、AIモデルが最適な育種条件を自動調整します。さらに画像認識技術により、生育段階や病害虫発生状況、稔実率を高精度で判別しています。
AIシステムは1日あたり10万個以上の種子個体を評価でき、選抜精度は98.2%に達します。その結果、優良品種の選抜期間は従来の平均3.5年から2.4年へ短縮され、育種効率は約30%向上、コストも大幅に削減されました。
現在は「龍粳」シリーズの高収量・耐寒・耐病性品種の育成が進められており、寒冷地農業の高度化を支える基盤技術となる見込みです。日本の稲作研究にとっても、AI活用による育種高度化は今後の重要なテーマとなるでしょう。
(中国の報道に基づいて編集。写真は一部AI生成)






